「いや~先生。最近調子はどうですか?」
「はい~ボチボチやっています」
以前から知り合いの山田先生(仮名)が、とある研究会で出会った際に声をかけてくださった。
山田先生は、私の業績はよくご存じない(微妙に専門ジャンルがずれているので)にもかかわらず、
時々、一緒に論文書きませんか、など声をかけてくださるありがたい存在。
その先生と、いつか何かお仕事をする機会があるかもしれない…と思ってたんだけど、
「僕の大学で、次年度の集中講義、担当していただけませんか。」
お声をかけていただきました。
私は専門職とは言え、そこらへんでひっそりと生活を営んでいるヒラ職人。
私の職歴は、子どものことや介護などの家庭の事情で継ぎはぎだらけで輝かしいところは一点もない。
そんな私をいつも温かく見守ってくださり、折に触れお声をかけてくださる山田先生にまず感謝。
そして、やはりその温かいお気持ちにはお応えせねば。
「私でお役に立つのであれば、こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。」即答したよね。
ただ、大学の非常勤講師を引き受けだして10年ほど経つものの、集中講義は初めてや。
すこ~し、胸騒ぎがしたのを覚えている。
講義を依頼される流れは、意外とアバウト
って言ってしまっていいのかどうか。
ただ、私が今までお引き受けした依頼は、全てこんな感じでした。
まあ、履歴書やら、職務経歴書やら、業績書やらの提出ももちろんありますし、最近では「直近の〇年以内に論文を書いている(研究発表をしている)」というのも採用の要件になってきていますが、まあ、最低限の体裁が揃っていたら、教授会で「まあ、いいんじゃな~い」って感じで採用決定らしい。
高校までの先生と違って教員免許は必要なく、教育のスキルみたいなものは問われないことがほとんど。大学講義を〇年以上担当したことがあるかどうが応募要件の大学もあるけど、基本(たぶん)教授会でOK出ればGOなので、こんな感じで担当の先生からアプローチがあって書類出して不採用だったことは一度もありません。
なので、教育経験ゼロの私が、はじめて講義をお引き受けした時は、ビビったよね。
職人ってだけで、教員免許もないし人にものを教えたこともない。しかも、しゃべるのはさほど得意でもないし、スピーチ力的なものは、私の職業的スキルには必要ないものだったので、磨く動機も機会もありませんでした。
私でええのんか!でもやるしかないか。
ただ、年を重ねるにつれ、こういった講義や講演会、執筆の依頼もいただくことがボチボチあり、なんとな~く慣れてきた今日この頃。
非常勤講師を集める先生も大変そう…
そんな印象もあります。
イメージとしては、どれだけの非常勤講師を確保せねばならないかが学部内で決まって、それをコーディーネートする係りになった専任教員が、非常勤講師を集める感じです。
ご自身の研究分野なら身近なポスドクに話をふったり、研究仲間や現場のプロで面白いことをやっている知人に集中講義をお願いしてみたり、そういうこともあると思う。
たぶん、一番難儀なのは、自分の研究とあまりかかわりのない領域の科目で非常勤講師が必要になった場合。
係りの先生は、何とかコネクションを駆使して、探し回っておられるのではないかな。
以前、非常勤講師を探している先生の弟子の知り合いの方から「~大学で非常勤講師やれそう?」と連絡をいただいたことがあります。どんだけ関係遠いねん!って思ったけど、問題なかったのでお引き受けしました。
非常勤講師を仕切っておられる先生にご挨拶に上がりましたが、「△△先生のお知合いで…?」と聞かれ「いえ…その先生の知り合いの◇◇先生が私の恩師でして…」みたいな、よくわからない会話をした覚えがあります。
まあ、大学の財政的にも、非常勤講師を無くしてすべての授業を専任教員が担当するということは難しいやろし、例えば企業の最前線で働く職人とかがする授業は魅力的な感じがする。
私は町の一職人だけど、魅力的に感じてもらえる授業ができれば。
一方で、非常勤講師の待遇が劣悪であることは、以前より問題になっているようですね。
その話題は、また今度。