先生方はシラバス入稿が終了し、騒がしい学部の講義を終えホッとされている頃ですよね。お疲れ様です!
シラバスの入稿は早いところだと12月初旬、遅いところだと年明け1月が締め切り。 最近は、パソコンで入力できるようになっているし、昨年度シラバスからのコピペ機能もついていたりするので楽ちんです。 簡単なのですが、これが済まないと落ち着かない感じです。
大学の先生も色々な人がいるから、出勤簿に「シラバス入稿お願いします!」とか「○日までに補講してください!」と付箋を付けられ注意されている先生もチラホラ見かけます。
私は、社会に出ているので、期限を守らないというのは社会的な信用や評価にかかわってくる、何より困る人がいる、ということを体験的に知っていますし、小心者なのでその辺はキッチリやっていますが、大学でしか働いたことがない先生はその感覚が乏しいのかな~なんて思います。(もちろん個人差ですが) 学者には、特に社会的な律義さは求められませんからね。うらやましいです。
さて今日は、「はじめてのシラバス」考です。
「じゃあね~よろしく~」ではじまるのが大学講義の依頼です(少なくとも私の場合)。
以前 書きましたが、「お願いできますか?」以外のオーダーは、私の場合は今まで一度もありません。 www.kougi.info 単純に、担当科目名を告げられ、できるかできないかだけを問われ、「お引き受けします」と言った後は、「じゃあ、そのうち教務課から連絡が来ると思いますのでよろしく~」で、ほぼ契約完了です。
後は、言われるままに、履歴書、研究業績書などを提出し、粛々と、教務課との事務的なやり取りをこなすのみ。
授業の内容について、とやかく言われることはまずありません。これは、私立も公立も(私の場合)同じです。
はじめての科目を依頼されるとき、まず何をするのか。先生によって授業の準備の順序や方法は様々だと思いますが、私の場合、
コースデザイン=シラバスを作成する
シラバス作成の依頼は、大抵、開講される数か月前にあります。開講はまだまだ先のことだし、それまでに気が変わって内容も変わるかもしれないし、とりあえず、スケジュールについてはざっくりと…
『○○学入門』
- オリエンテーション、○○の意義と目的
- ○○の倫理
- ○○の歴史
- ○○の基礎概念(1)
- ○○の基礎概念(2)
- ○○の基礎概念(3)
- ○○に関する諸理論(1)
- ○○に関する諸理論(2)
- ○○に関する諸理論(3)
- ○○が活かされる現場(1)
- ○○が活かされる現場(2)
- ○○が活かされる現場(3)
- ○○の今日的課題(1)
- ○○の今日的課題(2)
- 講義のまとめ
こんな感じで提出して、それから授業が始まるまでじっくり内容を作りこむ、そういう方法もありかもしれません。
まあ、『シラバス登録の手順』的な、教員に配布されるリーフレットには、たいてい「(番号だけじゃなく)どういったことを学ぶのか、イメージできる内容を具体的に補足して書いてください」的なことを書いてありますが、上記のようなスケジュールを提出しても、(たぶん)文句を言われることはありません。
私も、誤字があったこともありましたが、職員にも、学生にも気づかれず、一年後に「そろそろシラバス書かねば~」と思って去年のシラバスを見直した時に気づいたり
…教務の人ちゃんと読んでんの?恥ずかしいやん、教えてや!って思いました。。。
実際に、↑こんなシラバスはたくさん見られます。
ただ、私の場合、授業を引き受けた瞬間からシラバス作成に取り掛かり、シラバスの執筆依頼がきて提出するまで、かなり多くの時間と情熱を注ぎます。
っていうか、この時が一番楽しいかもしれない。夢が見られるというか。
シラバスは、講義のシナリオです
私の場合、科目の内容に合った書籍を10~20冊くらい読み比べてみますが、読んでいるうちに、「これは基本やな」「この話題面白いよね」「これはきちんと踏んでこなかった内容だな、改めて勉強して授業に盛り込んでみようか」「論文にあたらんとあかんなあ」とワクワクしてきます。
その科目のストーリーが見えてくると、骨子が定まってきます。骨子にそってシラバスを書きはじめます。
シラバスを書きはじめると、「これは伝えたい」「ここは達成してほしい」「ここは押さえとくべし」「あの論文をまとめて資料に使おう」など、どんどんと具体的な授業のアイデアが思いつきます。
私は、自分用シラバスと提出用シラバスを二つ作るので、自分用シラバスに授業のアイデアを書き足していきます。
次は、授業の目標や、準備学習、各回のテーマ、評価の項目。 これは大学によって言葉は違えど、明記することがやんわりと義務付けられています。
ここまでくると、授業のシナリオがほぼ構成されています。 引き受けたときには漠然としていた授業イメージが、授業シナリオへと変わっていくのが実感できます。
はじめての授業を担当するときは、まず、シラバスをしっかり作りこむことをオススメします。
先生によっては、教科書選定から入られるかもしれませんし、自分の著書があればそれに沿った授業をされるのでしょうけれども。
シラバスは学修にむけての授業の設計図でもあると思う
シラバスは、『〇〇学』という授業の、いわば設計図です。
設計図通りに組み立てれば(学べば)、〇〇学、〇〇論の考え方やテクニック、或いは知識等を獲得することができるようにデザインしなくてはいけません。
まず、担当する科目に期待されていること、ニーズを理解することを私はとても大切にしています。
だから、そのニーズがよくわからない大学では、担当の先生や教務課の職員さんにうんざりされながらも食い下がって聞きます。
大体聞くのは、受講人数の見込み、科目の位置づけ、学生のレベル、利用できる資源などなど。
うっとうしい非常勤講師ですよね。
黙って引き受けてくれよ、適当にやってくれよ、と思われているかもしれません。
どの先生も、当たり前のようにやっておられるのかもしれませんが、こういうことって誰も教えてくれなくて最初の頃はトライ&エラーの繰り返しでした。
もちろん、先生方によっては、〇〇論は〇〇論であり、これ以上もこれ以下もない、と言う信念に基づいて作られた確固たる設計図を粛々と学生に提供する方もいらっしゃるでしょう。
そう強くありたいと思うこともあるのですが、色々な大学へ行っているとね。
そうもいかないな、と段々わかってくるんです。その話はまた後日。
また、研究の方法論がある程度確立されていて、卒業研究に向けて具体的、現実的に必要なスキルを習得させることが目標の授業は、私のようにややこしく考える必要はありません。
こういった科目は専任の先生が担当されます。
私が担当する文系専門職科目は、授業で習得してもらいたいスキルがある、かつ、だいたい非常勤講師が担当するのは、教養科目か、特殊な資格取得のための(私の担当科目の場合。ああ、何のジャンルかばれそう。)科目です。
なので、まったく予備知識のない人に向けてある程度、この世界の技術と考え方と理論を伝える、という授業になります。
さて、どうやったらこの子たちが楽しんでこの世界に入り込んでくれるか。技術を習得してくれるか。
そんなことを考えながら、授業を組み立てます。
そうしていくうちに、ここにワークを入れよう。ここ、ゲストスピーカー呼ぼうかな。ここは、講義だな。中間テストは必要かな。 具体的な指導の方針も固まってくるのです。
私のシラバスの作り方まとめ
科目に期待されるニーズを知る
科目に関連する書籍を読む
科目のニーズに即したテーマ、キー概念を抽出
3.で抽出したテーマに基づいてシラバス(スケジュールの部分)の骨子を書く
骨子を組み立てながら、自分用シラバスに 、授業各回で展開する内容のアイデアを書き留める
その他の項目を書く(到達目標、準備学習、評価、教科書など)
この本、最近見つけました。
とても基本的なガイドブックですが、周りに講義の運営について聞く人がいない私のような人には、かゆい所に手が届く1冊です。
若い時に読みたかった!
- 作者: 佐藤浩章
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…ただ、果たして私のシラバスは、学生に読まれているのかどうか、シラバス考2で考えてみたいと思います。